君に染まる(後編)
ただ1人を除いて。
「なんだそれ。俺に愛人つくれってか」
腕を組み不機嫌そうに創吾先輩がつぶやいた。
「遊びならともかく、同時に2人以上の女相手するほど暇じゃねぇんだよ。何より面倒くさい」
立ち上がり私の腕を引っ張った。
「そ、創吾先輩?」
「ちゃんと紹介したし、もうこれでいいだろ。別にこれ以上話すことなんてねぇんだから」
「創吾さんどちらへ?」
「帰る。仕事だからっつってこれ以上拘束されちゃたまんねぇからな」
「でも、まだ打ち合わせが」
「別に今日じゃなくてもいいだろ。これから忙しくなるのは分かってんだから」
そう言いながら私を抱き寄せる。
「ちょっとぐらい息抜きさせろ。未央に会えてなくてストレスたまってんだ」
嬉しそうににやにやする美紅先輩に反して菅咲さんの顔が少し引きつった。
「じゃ。明日また連絡するから。行くぞ未央」
「あ、はい」
慌てて靴を履き、みんなに頭を下げて創吾先輩に続いてVIPルームを出た。