君に染まる(後編)
先輩の部屋に付くと真っ先に目に入った机の上の大量の資料。
「もしかして…ずっとお仕事してたんですか?」
「ん?ああ、ちょっとな。結構大きい仕事があって」
上着を脱いでネクタイを緩めている。
「先輩、そういえばスーツ…」
「ああ。午前中打ち合わせでな。取引先がいたから仕方なく。堅苦しいからあんま来たくないんだけど仕事柄そうはいかねぇし」
ソファーに座った先輩は「ん」と手を差し出した。
誘われるがまま先輩の手を取るとゆっくり引き寄せられぎゅっと抱きしめられる。
「ふー、落ち着く」
そのまま何度か唇を重ね「充電できたかな」と満足そうに笑った。
「蘭のこと黙ってて悪かった。隠すつもりなかったけど付き合い始めた時点で話すべきだったな」
「そんな、気にしないでください。…確かにちょっとショックでしたけど、財閥の跡取りですもん。婚約者がいて当然かなって思いますし」
私の言葉にまた満足そうに笑い、菅咲さんのことを話してくれた。