君に染まる(後編)


菅咲財閥はいくつもの有名旅館を経営する大企業で現在は日本の伝統を売りに海外進出をしている。
獅堂財閥とは競合会社ではあるが洋と和でスタイルが違うことから何かと助け合ってきた。
その理由として創吾先輩のお父様と菅咲さんのお父様が親友同士だからだそうで、そのためか2人は幼い頃から許嫁として育てられた。
けどただの口約束でなんの拘束力もないし正直本気にしてるのは菅咲さんだけ。
創吾先輩はまったく相手にしてないみたい。

だから何も心配しなくていい、と創吾先輩は言う。


ただ、今一緒に仕事をしているから2人になる機会が増えるけど…と続けた。


2年前に企画された両企業合同のホテル建設を跡取りである2人が主に取り仕切っているみたいで、その仕事がそろそろ大詰めだからと海外暮らしの菅咲さんは帰国したようだ。


OPEN記念パーティーが終わり落ち着いたらまた海外に戻るそう。


「それまでは蘭に付き合わなくちゃいけねぇし、未央とはなかなか会えないと思う。悪い」

「お仕事ですし仕方ないです。全然大丈夫です」


話が聞けて安心したのもあって笑顔でそう言うと少し先輩の顔が曇った。



「全然?」

「はい、大丈夫です」


「淋しくないのか?」

「え?」


ソファーの背もたれに頬杖をつき私をじっと見つめる。


「先輩?」


首をかしげると急に私を抱き上げて一緒にベッドに倒れこんだ。


「俺は淋しいけど、未央は淋しくないんだな」

「あの…先輩…?」

「淋しくないんだな」


私に覆いかぶさり鼻をかすめる距離でじっと見つめられる。


「淋 し く な い ん だ な」

「さ、………淋しいです」


すごくすごく小さい声で呟いた。


とっても不満そうにまた口を開く。

「さ~み~し~―――」
「淋しい!……です」


もう限界だと目で訴えるとようやくフッと笑った。


「ったく」

おでこをコツンとくっつけ今度はちょっと満足そうに笑った。


「聞き分けのいい彼女で嬉しいけど良すぎても不安になるだろ。まあ、そういう性格だって知ってるけど」

チュッと一瞬だけキスをしてまた見つめられる。


「仮にも俺の事好きだって言ってる女と一緒にいるのにそんな笑顔で大丈夫って言われたらさ?な?」

「…ごめんなさい」

「少しぐらい面倒くさくなったっていいんだぞ?『他の女の人と2人っきりになんてならないで!』とか」

「だってお仕事ですし…」

「冗談でも聞きたいってこと。俺のわがままだよ」


そう言うと少し沈黙の後ゆっくり唇を重ねながら先輩の手が私のシャツのボタンを外していく。


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