君に染まる(後編)
菅咲さんに連れられて近くのカフェに入った。
いつもは学生で賑わってるのに今日は人1人いない。
不思議に思っていると菅咲さんがニコッと微笑む。
「貸し切りにしていただきました。大事な話をするのに他の方がいると落ち着きませんから」
苦笑いを返す私を気にもせず席に座る。
店員さんに注文する菅咲さんを見てるとその所作の綺麗さに思わずため息が出る。
大和撫子。
その言葉がぴったりだ。
初めて会った時もVIPルームで会った時も少しの時間しか対面していなかったからいざ2人きりになると育ちの違いを思い知らされる。
「創吾さんとこちらにいらしたことは?」
突然の質問にすぐに返答できず少し間を置いて答えた。
「…ありません」
「そう。星条学園の生徒さんがよく利用されると噂を聞いたので。じゃあデートはどんなとこに行かれるの?」
「…どうしてそんなこと聞かれるんですか?」
「どうして教えて下さらないの?」
質問に質問で返されてしまった。
しかも迷うことなく。
「話す理由がありません」
「どうして?未央さんは創吾さんの恋人、私は婚約者。立場は私の方が上ではありませんか?」
その考え方に何も言えなかった。
まるで菅咲さんが奥さんで私が不倫相手のようなこの感じ。