君に染まる(後編)
「未央!」
私の言葉を遮る聞き覚えのある声。
菅咲さんも驚いた顔で見つめる先に息を切らした創吾先輩がいた。
「創吾さん、どうしてここに」
「どうしたもこうしたもねぇよ。蘭、勝手なことすんな」
睨み付ける先輩に菅咲さんは顔をしかめた。
「勝手なこと?創吾さんのために私は」
「それが勝手だっつってんだろ。お前が首つっこむことじゃねぇ」
「婚約者ですのよ、私」
「そんなのなんの効力もねぇだろ。勝手に言ってろ」
吐き捨てるように言うと「帰るぞ」と私の手を引く。
「お待ちください創吾さん!」
ガタンっと椅子の音が響き足を止める。
「本当に未央さんを本妻に?一般庶民の方は妾としてしか」
「うるせぇな!!!」
私も菅咲さんもビクッと体を震わせた。
「帰国してからその話ばっかりしやがって。本妻だ?妾だ?、お前はいつの時代を生きてんだよ」
「創吾さん…」
「言っとくけど妾なんていらねぇし必要もない。万が一作ったとしても妾になるのは蘭、お前のほうだ」
菅咲さんがの顔が青ざめていく。
そんなこと気にも止めない先輩に連れられて店を出た。