君に染まる(後編)
店の外には獅堂の車が停められていて、乗り込むと同時に創吾先輩は私をきつく抱きしめた。
「悪かった」
「創吾先輩…ちょっ、痛っ」
「あ、悪い」
パッと離れた後、改めて優しく抱き寄せられる。
「蘭になんか言われたろ、気にしなくていいから」
創吾先輩ちょっと汗かいてる。
「先輩、どうしてここに?」
「優が連絡してきたんだよ、蘭に連れてかれたって。あいつこっちに来てから未央のことばっか聞いてきやがって、妾とか…うるさくてな。だから未央に余計なこと言いに行ったんじゃないかと思って焦った」
「それでわざわざ来てくれたんですか?」
こんなに慌てて…。
「当たり前だろ。余計なこと言われたせいで未央が別れるなんて言い出したら困る」
「そんなこと…」
「分かってる。けど、嫌なんだよ。知らないとこで未央が傷つくのは」
心臓がうるさくて仕方がない。
どうしてこんなに嬉しい言葉ばかりくれるんだろう。
これだけで不安が消えていく。
「…大丈夫です。私には縁のない世界すぎて理解が追い付かなくて混乱しちゃっただけですから」
「縁のない…」
先輩の腕の力が強まる。
少し沈黙になった後、私の顔をじっと見つめておでこにキスを落とした。
「畠山、未央に2人つけてくれ」
「かしこまりました、坊っちゃん」
頭に手をおき先輩が微笑む。
「蘭があっちに帰るまで護衛つける。だから安心しろ」
「そんな、私なら大丈夫ですよ?」
「いいから」
俺のワガママだから、と続ける先輩。
これ以上拒否しても無駄だと思い「分かりました」とうなずいた。