君に染まる(後編)
「そんなことより…」
そう言って先輩は私の顔をじっと見つめた。
「久々に未央に会えた」
嬉しそうに笑う。
「あ…」
菅咲さんのことで頭がいっぱいだったから忘れてた…この1ヶ月間の電話のこと。
急に恥ずかしくなってきて全身が熱くなる。
「淋しかった、会いたかったし…こうしたかった」
頬に触れ、髪に触れ…おでこ、目といろんなとこにチュッと軽いキスをしてくる。
「先輩…畠山さんが」
「ん?」
運転してるとはいえバックミラーを見るたびに視界に入るはずだ。
「キスしかしない」
「でも恥ずかしいです…」
「あんま一緒にいられないし」
「でも…」
ずっと見つめてくるから恥ずかしくて目をそらしながら何度も首を振る。
「じゃあ好きって言って」
「え」
それもそれで恥ずかしい。
「未央」
無理やりなんかじゃない…ものすごく優しい顔でねだるような表情で顔を覗き込んでくる。
最近の先輩は優しすぎて困る。
小さくうなりながら迷い続け、とうとう根負け。
そらし続けた視線を先輩に向けた。
「…好きです」
先輩が目をほそめる。
「…俺も」
頬にチュッと軽く触れると私から体を離した。
「坊っちゃん、未央様にあの話を」
畠山さんが創吾先輩にバックミラー越しに話しかける。
「あの話?」
首をかしげる私に先輩は真剣な顔で口を開いた。