君に染まる(後編)
「やっほー未央ちゃん」
「美紅先輩!?」
ドレスに身を包みいつもとは雰囲気は違うけれど、確かにあの美紅先輩がひらひらと手を振りながら近づいてくる。
「どうしてここに?」
「創吾んとことうちはお得意様だからね。パーティーに招待されたの。本当はパパだけで来るはずだったんだけど未央ちゃん連れてくるから付き添ってやってくれって私も一緒に来ちゃった」
あれがパパ、と離れたところで挨拶をしている人を指差す。
「未央ちゃん今日すっごく綺麗。創吾んとこでやってもらったの?」
「あ、ありがとうございます…。そうなんですけど、浮いてませんか?」
いつもと同じで気さくに話してくれているけど、目の前にいる美紅先輩がいつもと違うから途端に不安になる。
美紅先輩も創吾先輩と同じ、財閥の跡取り。
私と違ってこういう場所に慣れてる。
育ってきた環境が違うし、住む世界が違うんだ。
「…大丈夫。浮いてなんかないわよ。今日の未央ちゃんすごく輝いてる」
うつむく私の頬を両手で挟む。
「それにそんな顔してると創吾が心配しちゃうわよ。ただでさえ主催者側で忙しいのに自分のせいで仕事に集中できなかったら嫌でしょ?」
「あ…」
美紅先輩の言葉にグッと力が入る。
「そう、ですよね…ごめんなさい」
顔をあげ背筋を伸ばす。
「おや…美紅様お見事です。坊ちゃんより未央様のこと理解していらっしゃいますな」
「違うわ。創吾は未央ちゃんに嫌われたくなくて甘やかしてるだけ。言うことはきちんと言わないと。『大丈夫』『心配するな』だけじゃ逆に不安になるわ」
ね?とウインクをする美紅先輩に小刻みに顔を縦に振る。
「んじゃ、まず腹ごしらえよ。ほら、お料理取りに行きましょう」
美紅先輩に手を引かれ料理の並ぶテーブルに連れていかれた。