君に染まる(後編)


「そのお寿司、美味しいですわよ」


お皿に手を伸ばした手が止まる。


「うち専属の板前に握らせたものですから」



にっこりと笑みを浮かべ私を見つめるのは菅咲さん。



「何か用?」


私が言葉を発するより早く美紅先輩が菅咲さんへそう聞いた。


「創吾さんが未央さんを招待するとおっしゃっていましたから探していたのです。ただの挨拶ですわ」

「そう、じゃあもう用はないでしょう」


行きましょう、とその場から離れようとする美紅先輩。



「未央さん」


思わず足を止めた。



「今夜、私の父も日本に来ています。1つはこのパーティーに出席する為。そしてもう1つ、パーティーの後に創吾さんと話し合いをする為」


「話し合い?」


眉をひそめた。


「ええ、私と創吾さんの今後について。…どういう意味かお分かりになりますわよね?」


微笑み、聞いてくる。


「創吾にバッサリ言われたのに懲りないのね」

「あれは創吾さんが勝手におっしゃったこと。ただの想い。けど、獅堂家と菅咲家の話し合いともなれば別。ただ想いが強いだけじゃどうにもならないこともありますわ」
「ないわよ」



自信満々な菅咲さんに即答した美紅さんにギョッとする。


「あなた創吾のこと何も分かってない。お父様に泣きついたってどうせ無駄だから諦めなさい。行くわよ未央ちゃん」




顔をしかめる菅咲さんに小さくお辞儀をして美紅先輩を追いかけた。


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