君に染まる(後編)
早足で歩いていく美紅先輩を小走りで追いかけ…ようとしてまた慣れないヒールでつまずいてしまった。
「おっと」
誰かに支えられたと認識するのに少し時間がかかった。
「またか、気を付けろ。せっかく可愛い格好してんだから」
聞きなれた声に顔をあげると少しあきれた様子の創吾先輩がいて。
「ヒールが低いの用意すれば良かったな。今からでも履きかえるか。靴ずれとかないか?」
気付くと私の足元に跪きパンプスに触れていた。
周囲がざわつく。
「せ、先輩…っ」
恥ずかしさで顔をあげていられない。
「坊っちゃん」
少し離れていた畠山さんがざわつく人々の中から現れた。
「よろしければこちらをどうぞ。念のため使用人から預かっていたので持ってまいりました」
そう言って差し出した箱を開けると今履いているものより低く太いヒールのパンプスだった。
「助かる。未央、足上げれるか?肩に手のせていいから」
「え、あ…」
言われるがまま跪く先輩の肩に手をのせ、足をあげる。
まるでおとぎ話の王子様のようだ。
周囲のざわつきなんて聞こえないほど心臓の音がうるさい。