君に染まる(後編)


急に先輩が黙り込む。

ざわつく会場にうつむいていた顔をあげると先輩と目が合った。


「創吾様?どうかされましたか?」

司会の人が慌ててフォローに入るも先輩は私から目をそらさない。

まるで、ずっと私のことを見ていたかのように、私だけしか目に入らないとでもいうような…仕事モードの先輩でなくいつもの2人でいるときの目で見つめられる。


不思議に思いながら私も目をそらせないでいると先輩は私を見つめたままマイクを口元にあてた。


「すみません、ホテルの名前を発表する前にもう1つサプライズをいいでしょうか」


そのまま壇上を下りる先輩は司会の人と蘭さんの制止する声も聞かずまっすぐ私のもとに歩いてきた。


腰に手を当て。


「おいで、未央」


少し強引に、でもゆっくりと壇上の方へ誘導される。


「せ、先輩?」


抵抗しようにも先輩の力が強くて、わけのわからないまま壇上まで連れてこられた。

先輩は先ほどの立ち位置に、私はその横に誘導されるもたくさんのライトで眩しい壇上に圧倒され一歩下がった。


先輩はマイクを右手に持ち直すと、一歩下がった私の腰に手を当てさりげなく前へと促す。


「顔あげて、堂々としてろ」

私の耳元でそう囁くと1つ咳ばらいをして再びマイクを口元へ。


「ご紹介します。私の恋人の百瀬未央さんです」


とんでもない発言をした。

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