君に染まる(後編)
鳴りやまない拍手にいつ頭をあげたらいいかわからずチラッと先輩の方を見るととうに顔をあげていて私にまた手を差し出していた。
「下りるぞ」
慌てて顔をあげると管咲さんは壇上横の階段を既に下りていて、司会者の人がこちらへと誘導してくれている。
「あ…」
先輩の手を取り歩き出そうと一歩を踏み出した。
けど、ガクンと膝が折れ先輩にもたれかかるように倒れこむ。
「あ、ご、ごめんなさい…」
ただでさえ注目の的なのにここはスポットライトを浴びた壇上。
会場が明るくなったとはいえ会場中の視線を集めた中での失態にカッと顔が赤くなった。
「どうした?」
「足が、動かなくて…」
「は?」
今にも倒れこみそうな私を見て少し吹き出すと、躊躇いなく私をよいしょと抱え上げた。
いわゆるお姫様抱っこというやつで。
「せ、先輩!?」
声にならない声で叫ぶ私を気にも留めずそのまま壇上を下りた。
恥ずかしさで死にそうな私はうつむいたまま顔を上げられず。
先輩はスタスタと歩いていくと一瞬立ち止まり。
「失礼。彼女にも内緒のサプライズでしたので緊張と嬉しさで腰を抜かしてしまったようです。介抱してきますので皆様は気になさらずお楽しみください」
会場中に聞こえるような大きな声でそう言うと私を連れたままその場を後にした。