君に染まる(後編)
けれど、ふぅと一呼吸をして管咲さん達を見ると急に厳しい眼差しになった。
「お久しぶりでございます管咲会長。お久しぶりでございます、蘭さん」
丁寧にお辞儀をするお母さんに管咲さん達も同じように返す。
けど、管咲さんのお父さんは少し冷や汗をかいていた。
「それで、さきほどの騒ぎは一体なんですか?」
「そ、園子さん。それが、創吾くんが蘭という婚約者がいながらそんな小娘と」
「小娘?」
管咲さんのお父さんがビクッと反応する。
「よそのお宅の大事な娘さんのことを小娘だなんて言えるほど、管咲さんは偉いのですか?」
「し、しかしですね」
「それに、少し聞こえてきましたけど…泥棒猫とも仰ってませんでした?」
先輩のお母さんの圧に、どんどん顔が青ざめていく。
「管咲財閥の会長ともあろう方が、家柄で人を判断するのはおやめになったほうがよろしいかと」
「ですが…じゃあ、うちの蘭と創吾くんの婚約はなんだったんですか?先程からの園子さんの態度、創吾くんが選んだ相手なら誰でもいいような、そういう風に見えましたぞ」
「誰でもいいだなんて…私はただ、創吾が選んだ相手を信じてるだけです。創吾なら、獅堂の家のこともしっかり考えて選んでくれていると」
「ハッ…獅堂は、一般家庭のなんの教養もない娘を嫁にする気ですか?なんの得にもならないのに」