君に染まる(後編)


「菅咲会長」


口を開いたのは創吾先輩だった。


「そういうわけなんで、蘭さんとの婚約はなかったことにさせてください。改めて父よりご連絡させていただきます。では」


軽く頭を下げると私の手を掴み「行くぞ」と菅咲さん達とは反対の方に歩き出す。


振り返ると下ろした両手をグッと握りワナワナと震えている菅咲さんのお父さんと一歩後ろで目を伏せて無表情の菅咲さん。



会社のこととか、取引のこととか、そんなの全然分からないしこんな結果でいいのかも分からない。


何より思考が追いつかないのは創吾先輩との将来が私の知らないとこでどんどん進んでいる気がするから。

嫌じゃない…嬉しいけど何かモヤモヤする。


菅咲さんのことがあるからなのか。


心の奥に突っかかるものが取れなくて、正体も分からなくて、不安が拭えない。

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