君に染まる(後編)
「いいんじゃねぇか?別に」
腕を組み壁に持たれていた先輩はあっけらかんとそう言った。
「同じテーブルじゃなくて、少し離れて食えば」
「坊っちゃん。ですが」
「しきたりは大事だけど、できる範囲内でやれることやればいいんじゃねぇの。それに、こんな可愛いお願いには逆らえないな」
嬉しそうに私を見つめる。
「…では、お言葉に甘えて」
畠山さんが丁寧に頭を下げる。
「よし、そうと決まれば早く頼もうぜ。俺も腹減った」
部屋の奥に戻る先輩。
私は「どうぞ」と畠山さんを部屋に促して扉を閉めた。
「…未央様は、本当に素敵な方ですね」
入り口で立ち止まったまま畠山さんが私を見つめる。
「早くお屋敷にお迎えし、お仕えできる日を楽しみにしております」
そう言い、微笑む。
私はぎこちない笑みで返事をするしかできなかった。