君に染まる(後編)
ふさわしいのは私じゃない
週末が明け、パーティーから2日が経った。
あの夜だけでいろんなことがあって思考が追いついていない。
でも、1番気がかりなのは…。
「創吾にプロポーズされたんだって?」
裏庭で、うずくまって猫を撫でていると頭の上から声が聞こえてきた。
顔を上げると優先輩がいつもの定位置に座り込む。
「ここに来たってことはなんか心配事?プロポーズ嫌だったの」
撫でていた猫は優先輩に飛びつき、私からあっけなく離れていった。
「美紅先輩に聞いたんですか?」
「うん。すごいテンション高かった。自分のことのように喜んでたよ」
その光景は想像がつく。
「嬉しいです」
美紅先輩には本当にお世話になっていると感じる。
「…未央は嬉しくなさそうだけど」
「そんなことないですよ?すごく、嬉しいです」
「じゃあ何か他にあるんじゃないの」
「どうしてそう思うんですか?」
「未央がここに来るときは何か悩んでるときでしょ」
黙ってうつむいた。
「あの婚約者のこと?あんなの気にしなくていいんじゃない。創吾はまったく相手にしてないんだし」
「…そうなんですけど、そうじゃなくて」
このモヤモヤがうまく言葉にできない。
確かに悩みはある。
けど、何に悩んでいるか自分でもよく分からない。
何かが、奥の方でつっかえている感覚がずっとしている。