君に染まる(後編)
ようやく体調が戻り明日からまたいつもの日常に戻る。
パジャマから着替え部屋を出ると大学から帰ってきたお兄ちゃんがパッと明るい表情で私を抱きしめた。
「未央!やっと元気になったのか!」
「お兄ちゃん、苦しい」
ハッとして私を解放したお兄ちゃんは私の様子に首を傾げた。
「どこか行くのか?」
「ちょっと。…創吾先輩のとこに」
不機嫌になるかと思ったけどすんっとして「そうか」と言った。
「送っていこうか?」
「ううん。歩いていく。まだ時間も早いし」
「気を付けて」
「うん」
精一杯の笑顔を向けて家を出た。
…不自然だったかな。
少し不安になりながら夕方に向け色が変わりつつある空を見上げる。
「電話しなきゃ…学校かな、家かな」
歩きながら1人呟く。
久しぶりに開いた携帯には大量の連絡が入っていた。
楓ちゃん、美紅先輩、卓先輩、優先輩も。
一番不在着信が多いのは創吾先輩だった。
心配させちゃったな。
きっと私に連絡が取れないからお兄ちゃんに状況を聞いているはずだけど、それでも毎日のように不在の履歴が入っている。
今日の日付の不在履歴を押すと過去の通知が一瞬で消えた。
チクッと胸が痛む。