君に染まる(後編)
5分ほど歩いたところで畠山さんと合流した。
先輩の家に向かう間、この1週間大変だった話を聞かされた。
寝込んでいる上に連絡が取れなかったせいで創吾先輩がずっと不機嫌だったと。
仕事も手につかず学校にも行けていなかったらしい。
いつもなら申し訳ないと感じるのに、今は違う。
先輩にとって私は…。
見慣れた門を通りいつもの先輩の家。
畠山さんがドアを開けてくれて車を降りると同時に玄関の扉が勢いよく開いた。
「未央!」
認識するより早く先輩に強く抱きしめられた。
「せ、んぱい…苦しい…」
「会いたかった」
背中を叩いても抱きしめる力を弱めてくれなくてよっぽど心配させてしまったんだと反省した。
私も同じように腕を回して先輩を抱きしめる。
「ごめんなさい、連絡できなくて」
何も言わずしばらく抱きしめたままの先輩はしばらくしてようやく体を離した。
「元気そうで良かった」
両手で私の顔を包み込み嬉しそうに微笑む。
うまく笑えるか不安だったのに、こんなに嬉しそうにされたら…思わず同じように微笑んだ。