君に染まる(後編)



「悪いな。少し忙しくて散らかってる」


先輩の部屋にはいつもは見たことがないパソコンやタブレットがあり書類もソファーや床に散らばっていた。

「忙しいのに、すみません…」

「いや、大丈夫。いつもは仕事部屋で作業するんだけど、面倒だから全部こっちに持ってきてるだけ」


通り道にあった書類を適当に机に置くとベッドに腰かけて腕を広げ私を見つめる。


「おいで」


無意識に足が動きかけて踏みとどまった。


「未央?」

「あの…まだ完全に治ってないかもですし、うつしたら悪いので今日はやめておきます」

「いいよ。未央の風邪なら」

「ダメです。こんなに忙しいのに体調崩したら大変じゃないですか」


広げていた腕をだらんとベッドに下ろすとムスッと不機嫌な顔。


「1週間も音信不通でやっと会えたのに?ひでぇ」

「でも…」


それに今日は…。


「分かった」


そう言うと先輩は立ち上がりベッド近くの棚からマスクを取り出し自分と私につけた。


「これなら少しぐらいくっついててもいいだろ」


そのままキスをしてベッドへ運ばれる。


ベッドに座る先輩に向かい合い跨るように座らされた。


「何もしない。このまま少し抱きしめさせて」


腰に回る腕と首筋にうずまる顔。

何度か大きく深呼吸をする先輩はすごく疲れているようだった。


1週間、触れ合っていなかった先輩の体温を感じて幸せな気持ちになる。


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