君に染まる(後編)
「未央様!」
気付くと横に1台の車が停まっていて中から畠山さんが降りてきた。
涙でボロボロの私の顔を見てギョッとするがすぐにいつもの調子に戻る。
「どうかされました?あの、坊っちゃんがお待ちですので一旦戻っていただけませんか」
「戻りません」
止まらない涙を拭いながら門に向かって歩き出す。
「未央様、お言葉ですが坊っちゃんに別れを切り出されたとか。何があったか存じ上げませんが坊っちゃんが未央様をお呼びですので無理やりにでも」
「ほっといてください!」
触れられそうになった手を思いっきり払いのけた。
「ほっといてください。先輩とは別れます」
涙と鼻水でぐずぐずなまま必死に声を絞り出した。
「…せめてお送りします」
「1人で帰れますから大丈夫です」
「私が坊っちゃんに怒られますから」
「じゃあ怒られてください。もう…お世話になるつもりはありませんから」
雑にお辞儀をして背を向けた。
先輩が追いかけてこないのなら走る意味はない。
すれ違う人にジロジロ見られながらしゃっくりあげるのを止められないままトボトボと歩いて帰った。
携帯には先輩からすごい数の不在着信が入っていた。
けど、私はそれを既読にすることなく着信拒否をした。