君に染まる(後編)
見上げた先輩は優しく笑っていて、
あたしはまた泣きそうだった。
ほとんどあたしが悪いのに、
どうしてそんな言葉をくれるんだろう。
どうしてここまで想ってくれるんだろう。
…違うんです、創吾先輩。
あたしは別に、
デートとか、手を繋いで下校とか、
普通の高校生カップルのようなことが
したいわけじゃないんです。
別に嫌なわけじゃなくて、ただ、
先輩が側にいてくれるならなんでもよくて。
今さらそんなことに気付くなんて
本当にバカだとは思う。
でもそうじゃなくて…
あたしが求めていたのは…"言葉"だった。
先輩の『未央だから』って言葉。
他の誰でもない"あたしだから"って言葉。
その言葉だけで不安は消え、
それと同時に思い知らされるのは
言葉にすることの重要さ。
頭で分かっていてもこんな性格上、
素直に言葉にすることは
この先も難しいと思う。
でも…今は…
伝えなくちゃいけない時だ…。
握られた手をぎゅっと握り返し、
先輩の体に寄り添った。
「…好きです」