君に染まる(後編)
「顔」
「え?」
思わず顔をあげるその間にもどんどんと言葉を並べていく。
「声、匂い、しぐさ、表情、考え方、喋り方、歩きか…」
「す…ストップ!!」
慌ててそう言うと、
先輩はあたしをチラッと見てフッと笑った。
「つまり全部」
「…っ」
まともな相槌がうてるわけもなく、そのまま固まる。
嬉しさや、戸惑いや、
とにかくいろんなものがドッと押し寄せてくる感覚でフリーズしたみたい。
きっと…顔真っ赤だあたし…。
照れもしない先輩は、
何事もなかったかのように立ち止まったあたしの手を引っ張って再び歩き出した。
少し歩いたところでピアノ教室が見えてきた。
「あ。えと…もうここでいいです」
そう言い、手を離そうとすると、先輩がギュッと力をこめた。
離せなくなってしまった手に思わず視線を向け、そのまま先輩へと視線を移す。