君に染まる(後編)
「あの…?」
「…好きだよ」
「え…」
「俺は、未央のこと、本気で好きだ。だから、もうバカなこと考えんな」
「バカって…さっきの、ことですか?」
「ああ」
あたしを見つめたままそう呟く先輩から視線をそらす。
言えない…分かりました、って。
その約束を守れる自信がないから、言えない…。
そのまま黙りこんでいると、先輩の手が頬に触れた。
反応する間もなく唇が重なる。
触れるだけのキスをした先輩は、
「努力しろ」
そう言ってじっとあたしの目を見る。
あたしの考えが分かっているかのようなその瞳に、思わず小さくうなずいてしまった。
それを見た先輩はフッと笑い、再び顔を近づけてきた。
その時。
「何やってんだ!!!!!!!!!!!!!」
突然の怒鳴り声に2人ともビクッと体をはねらせる。
反射的に顔を向けたあたしは、その声の主を視界にとらえた瞬間、体中から血の気がひいた気がした。