君に染まる(後編)
「ただ反対してるわけじゃない!相手が好青年なら俺だって…」
「…好青年?」
それまで黙っていたあたしは、その言葉に反応する。
「それどういう意味?先輩は好青年じゃないって言いたいの?」
「先輩だと!?お前年上と付き合ってるのか!?」
「そんなことどうでもいい、質問に答えて」
睨むようなあたしの視線に一瞬たじろんだお兄ちゃんは、
小さなため息をついた。
「…どう見たって好青年じゃないだろ。
茶髪にピアスにだらしのない服装。
あんなチャラチャラした奴が好青年と言えるか?」
「人を見た目で判断するの?」
「あいさつもまともにしなかった」
「しようとしてたでしょ!?なのにお兄ちゃんがさえぎったんじゃない!
だいたいお兄ちゃんだって茶髪だしピアスもしてる!!」
「兄ちゃんは大学生だからいいんだ。あいつはまだ高校生だろ」
「そんなのへりくつだよ!」
「まあまあ、2人とも落ち着いて」
興奮するあたしとお兄ちゃんを堀河さんがなだめる。
「吏雄の気持ちも分からなくもないけどさ、とりあえずこの話は終わり。
未央ちゃんのレッスン始めるからさっさと出てけ」
「いやでも…」
「これ以上お前が何言ったって未央ちゃんに嫌われるだけ。それでもいいのか?」
「そ、それは…」
そう言うと、あたしをチラッと見て、
「…分かったよ。とりあえず帰る」
ため息混じりに部屋を出て行った。