君に染まる(後編)
楓ちゃんの言う通りかもしれない…。
コンサートのことに気をとられてたけど、
まずは先輩とのことをお兄ちゃんに認めてもらわないと…。
「やっぱり、ちゃんと紹介した方がいいよ」
「紹介…」
「とりあえず、未央の家の障害は吏雄くんだけなんだから、おじさんとおばさんを味方に―――」
「なんの話だ?」
「!?」
突然後ろから声がして2人で勢いよく振り返る。
「し、獅堂先輩…どどどどうもです~…」
「何動揺してんだよ。てかなんの話だ」
あたしと楓ちゃんと交互に見ながら眉間にしわを寄せる。
「と、というか、獅堂先輩こそどうしたんですか?」
「未央を迎えにきた」
「え?」
「あ、もしかして一緒にお帰りですか?
どうぞどうぞ!あたしは1人で帰りますので」
「え、ちょ…」
「では失礼します!」
そう言って、声をかける間もなくその場から走り去った楓ちゃん。
残されたあたしの手を、先輩はぎゅっと握った。
「帰るぞ」
「え、あ…」
そのまま手をひかれる。
「あの…帰るって、歩いてですか?」
「昨日言ったろ、なるべくそうするって。嫌なのか?」
「嫌なわけじゃ…でも、毎日は無理って言ってたから…」
「俺がそうしたいんだよ」
そう言って、先輩は歩くスピードを落とした。
あたしに合わせるような歩調に、その言葉に、少し顔が熱くなる。