君に染まる(後編)
コンサート当日。
先輩はお仕事が忙しいのかあまり会えない日々が続き、そのおかげかお兄ちゃんも大人しく、何事もなく今日を迎えた。
準備も整い、衣装にも着替え、後は本番を待つのみ。
みんなと一緒に控え室で待機していると、携帯が震えた。
楓ちゃん?…あ、今着いたんだ。
まだ時間もあるし会いにいこうかな。
ドレスを引きずらないよう注意しながら入口へと向かう。
お客様で溢れるそこで、真っ先に声をかけてきたのはお兄ちゃんだった。
「未央ーーーーー!!!!!」
あまりの声の大きさに驚くお客様など気にもせず、受付に立っていたお兄ちゃんはあたしの方へ走ってきた。
「可愛いな!ホントに未央は白が似合う!!」
「あ…あり、ありがと……」
今にも抱きついてきそうな勢いにたじろぐ。
何事かと注目する周囲などおかまいなくまだ何か言っているお兄ちゃんに、ため息をつきながら楓ちゃんを探した。
受付を通り過ぎ、会場の外に出たところで見つけた。
「あ、未央!」
同時に楓ちゃんも気付き、一緒に来たらしい美紅先輩達とこっちへ近付いてくる。
「やだ!未央ちゃん可愛いすぎる!!」
普通に歩いてくる楓ちゃん達を置いて、少し早歩きで近付いてきた美紅先輩は勢いよくあたしに抱きついた。
「あ、ありがとうございます…」
「こんな姿創吾が見たら何するか分かんないわね。来なくて正解だったわ」
「そんなことないと思いますけど…」
「間違いないわ!」と言いきる美紅先輩は可愛い可愛いと言いながら解放してくれない。