君に染まる(後編)
身動きがとれず困っていると、背後から穏やかな声が聞こえてきた。
「君が西園寺美紅さんかい?」
あたしを抱きしめていた美紅先輩は顔をあげ、あたしも後ろを振り返る。
そこにはニコニコと笑うお兄ちゃんがいて、
「兄の吏雄です。未央からよく話は聞いてるよ。想像してたよりずっとキレイだね」
と言いながら美紅先輩に右手をさしだした。
「初めまして。そう言ってもらえて光栄です」
ためらいなく握手に応じた美紅先輩。
「君はⅢ類の生徒なんだってね?あの西園寺グループのご令嬢だとか…。
正直、そんな方と未央が知り合いなんて驚いたよ。
どういう経緯で知り合ったのかな」
お兄ちゃんの目つきが怪しくなる。
もしかして…創吾先輩絡みだと思ってる?
笑顔を崩さないお兄ちゃんにひやひやしながら美紅先輩の返答を待つ。
少しきょとんとした美紅先輩は、
「ああ…楓ちゃんはご存じですよね?
彼女と私の弟が付き合いだしたのをきっかけに知り合ったんです」
と、うまく創吾先輩のことを交わしてくれた。
「へぇ、そう…」
お兄ちゃんが疑いの目を向けていると、楓ちゃん達が周りに集まってきた。