君に染まる(後編)
「すごくよかったわよ!未央ちゃん!!」
「あ、ありがとうございます…」
コンサート終了後。
人でにぎわうエントランスホールで、美紅先輩が興奮しながらあたしの手を握りしめた。
「やっぱりいい演奏は整った環境で聞くのが一番ね。
いつも聞いてた未央ちゃんの演奏とはまた一味違ったもの」
そう言ってうんうんとうなずく。
その後ろから卓先輩が顔をだし、大きな花束をさしだした。
「おつかれさま、未央ちゃん。これ4人から」
「ありがとうございます!わぁ、いい匂い…」
落ち着く花の香りに自然と笑みがこぼれる。
「…この後約束してるんだっけ、創吾と」
「え?あ、はい」
「あ、そっか。じゃあ、あまり引きとめてたら創吾にネチネチ文句言われちゃうわね。帰ろうか」
「そうですね。コンサートに来れなかったから拗ねてるかもしれませんし…早く準備して会いにいってあげな?」
ニヤッと笑う楓ちゃんに苦笑いを浮かべる。
「じゃあね、未央ちゃん。また学校で」
手を振る美紅先輩達におじぎして見送り、控え室へと戻った。