君に染まる(後編)
「…も、もしもし?」
『もしもし、おつかれ未央』
いつもより少し優しい声音に胸が高鳴る。
「ありがとうございます…あの、来てたんですか?」
『ん…やっぱ聞きたかったからな』
「どうやって入ったんですか?受付にはお兄ちゃんが…」
『んなこと別に………あ、いや…』
そう言って突然黙り込んだかと思うと、またすぐに口を開いた。
『知りたいなら教えてやるよ。2階に来れるか?』
「あ、はい。分かりました」
一旦電話を切り、言われた通り2階へ向かう。
2階席に繋がる広場へ着いた時、あがってきたスロープとは反対にある非常口用のドアが開いた。
そこから顔をだしたのは、間違いなく創吾先輩。
遠くてはっきりとは見えないけど、確かに創吾先輩だった。
ドレスのすそを掴み、少し小走りで先輩に近づくと、はっきりと見えてきた先輩は少し笑っていた。
「よお」
「こ、こんにちは…どうしてそんなとこに………」
「まあ、とりあえず入れよ」
手を引かれ中に入ると、そこは普通の非常階段がある場所で。
そこからもう1つ上の階にあがると、【関係者以外立ち入り禁止】と書かれたドアが目に入った。