君に染まる(後編)
中に入ると、そこにはたくさんの機械があった。
詳しくないのでよく分からないけど、テレビでたまに見るレコーディングルームのような…。
「照明とか音の調整をするとこらしいぜ」
「…ここでですか?」
「ああ。と言っても、だいぶ古いものらしいし、この大きさのホールなら舞台そでにある装置で十分らしいから今はほとんど使ってないらしい。
たまに、中学や高校の吹奏楽部や演劇部なんかが練習で使ったりするらしいけどな」
そう説明しながら、人1人分しか通れない場所を先輩に連れられて歩く。
ドアからわずか数歩の場所に、かがまないと通れないほどの小さな扉があり、先輩がそこを開いた。
そこは、小さなバルコニーのような場所で…。
「結構な特等席だろ?」
ステージがよく見えるそこは、2階席よりも眺めがいいかもしれない。
「もしかして、ここから?」
「ああ。スタッフの人がここならいいんじゃないかって」
「あの、一応聞きますけど…獅堂の力を使った、とか…」
おそるおそるそう聞くと、目をそらし、顔をそらした先輩。
「…ピアノ教室に迷惑がかかるようなことはしてねぇぞ」
使ったんだ…。
「そんなことしなくても、後でいくらでも…」