君に染まる(後編)
少し動揺していたお兄ちゃんはハッとしてあたしの方へ顔を向けた。
そしてサーッと青ざめ、
「ち、違うぞ未央!兄ちゃんはそんな人間じゃない!!」
突然意味の分からないことを口にした。
「な、何が?」
「だから、その、けして未央が考えているような男では」
「だから…あたしが考えているような、って?」
「だって、おまっ…よからぬことを想像したろ?」
よからぬことって何…。
「兄ちゃんはな…その…いわゆるプレイボーイとかそういう輩ではなくてだな…」
「あら、吏雄くんプレイボーイなの?」
「ちがっ…!」
というか…自分でプレイボーイってどうかと……。
「と、とにかくだな!兄ちゃんはすごく誠実で、清い清い男で…」
「別に、お兄ちゃんが誰と遊んでたって気にしないし…そんな風に弁解しなくても…」
「でも勘違いされたら困る!」
勢いよくそう言われ、思わずたじろぐ。
その時、机に置いていた携帯が震えた。
メールの受信だと気付き確認すると、慌ててソファーから立ち上がる。
「そ、そろそろ部屋行くね、おやすみ!」
「おい、未央!」
呼び止めるお兄ちゃんを背にしてリビングを出ると、駆け足で自分の部屋に戻りながら短文のメールを返信する。