君に染まる(後編)
『…未央?聞いてるか?』
つい考え込んでしまっていたのか、先輩の声でハッと我に返る。
「あ、すみません…えっと…それで?」
『だから、イブは一緒にいてくれんだろ?』
「あ…はい!……あ、いや…イブは…」
「どっちだよ」と間髪いれない先輩に、焦りながら口を開く。
「あの…その…あたしは全然大丈夫、なん、ですけど………」
だんだんと声が小さくなるあたしに先輩がため息混じりに言った。
『…アニキか』
「…はい」
『………今、アニキ家にいるのか?』
「え?いますけど…」
『ちょっと代わってくれ』
「え?…ど、どうしてですか?」
『いいから』
よく分からないまま、先輩に言われた通りお兄ちゃんに代わるため、部屋を出ようとドアノブに手をかけた。