君に染まる(後編)


その瞬間。




「うわ!」
「きゃっ!?」



ドアを開けると、なぜかそこにはお兄ちゃんがいて、あたしの方へ倒れかかってきた。


とっさによけると、少しよろめいたお兄ちゃんは気まずそうな顔であたしを見た。




「…何してたの?」


「別に…何も……」


「………盗み聞き、してたの?」



そう聞くと、一瞬顔を強張らせた後になぜか開き直ったように踏ん反り返る。



「そんなことより…今誰と電話してたんだ?またアイツか?」

「お兄ちゃんには関係ないでしょ…」



いつものように顔をしかめて詰め寄るお兄ちゃんに、いつものようにしらばくれようとする。


けど、電話が繋がっていることを思い出し慌てて携帯を差し出した。



「…ん?」


「その…電話の相手…先輩、なんだけど…お兄ちゃんに代わってほしい、って…」


「は!?なんで!?」


「分からない…いいから出て」



ものすごく嫌そうな顔をすると、おそるおそる携帯を受け取る。


そのままゆっくりと耳へ近付け、



「……も、もしもし」




そう言った瞬間。


< 77 / 268 >

この作品をシェア

pagetop