君に染まる(後編)


「無理だ!!!」
ピッ



声をあげながら携帯を耳から離すと、勢いよく携帯を閉じた。



「ちょ…何してるのお兄ちゃん!」


「嫌だ!あんな奴と電話なんて耐えられん!声も聞きたくない!!」



頭をぶんぶん振りながらあたしに携帯を押しつけるように渡す。


そのまま部屋を出ようとするもんだから、慌てて引きとめる。



「待って!話も聞かずに逃げないでよ!!」


「無理無理無理無理!!絶対無理!!!」


「そんな子供みたいなこと…」



ドアの前で通せん坊しながら急いで電話をかけなおす。



「ほら、お兄ちゃん。今繋がってるから」



かすかに呼び出し音が聞こえる携帯を再び差し出すと、嫌々ながらも受け取ってくれた。



「切らないでよ」


「……分かっ……た…」



顔をしかめたままそう言うと、電話が繋がるのをじっと待っている。





「………もしもし」


あ…繋がったみたい…。



それと同時に更に顔をしかめたお兄ちゃん。


それでも、今度はちゃんと話を聞いているようでホッとする。


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