君に染まる(後編)
結局、そのままピアノ教室で時間をつぶした。
夕日が落ち、辺りがうっすらと暗くなってきた頃、お兄ちゃんからの〔帰ってきていいぞ〕というメールでようやくピアノ教室を出た。
凝り性のお兄ちゃんは、クリスマスに限らずイベントごとにきちんと飾り付けをしている。
きっと今年もすごいことになってるんだろうな…と思いながらリビングのドアを開けた。
けど、
「…あれ?」
想像と違い、リビングの飾り付けはほとんど終わっていなかった。
お兄ちゃんの手作りであろう飾りは段ボールにしまったまま。
クリスマスにだけ変えているカーテンやマットなどの生活用品も、変わっていたりいなかったり。
唯一準備が出来ていたのは、ダイニングテーブルの上だけ。
クリスマス仕様のランチョウマット、食器などが並べられ、後は料理が運ばれるのを待つのみの状態。
まだ準備中なのかな…でもメールきたし……。
首をかしげていると、キッチンで料理をしていたお母さんがあたしに気付き笑顔を向けた。
「おかえりなさい、未央ちゃん」
「ただいま。お兄ちゃんは?」
「吏雄くんなら…」
お母さんがそう言いかけたその時、ちょうどお兄ちゃんがリビングに入ってきた。