君に染まる(後編)
人で溢れる電車に揺られ、クリスマスムードで賑わう街中へ到着した。
「先に飯食うぞ」と連れられたお店は、予想通りフレンチのお店。
けれど、想像していたのとは違い、店内はアットホームな雰囲気で気後れしなかった。
テーブルマナーも厳しくなく、きっと、先輩が私に気をつかってくれたんだと思う。
食事の後は、特に目的もなくブラブラと街の中を歩いた。
イブの夜だけにどこもかしこもイルミネーションが煌めいている。
「…初めてですね、こういうの」
「あ?」
「なんとなく街を歩いたり…たまたま見つけたお店に入ったり…予定とか立てないでのんびりする感じです」
「…そう、だな…いっつも俺ん家だしな」
「はい。たまにはいいですね」
そう言いながら先輩を見上げると、なぜか顔を曇らせていた。
「…悪いな」
「え?」
「前約束したのに、結局どこも連れてってやれなくて…ホントはもっと……」
そう言いかけて、先輩は黙り込んでしまった。
どうしたんだろう…。
駅のホームでもそうだった…なんだか様子がおかしい気がする。
聞いてみようかと迷っていると、先輩が先に口を開いた。
「この後なんだけど、どっか行きたいとこあるか?」
「え?…いえ、特に」
「じゃあ、ちょっといいか?」
軽く微笑んだ先輩に少し首をかしげながらも、「はい」と返事をした。