君に染まる(後編)


エレベーターがとまり、扉が開くと、先輩はスタスタと歩き出した。


4ケタの数字が表示されたドアがズラッと並ぶ廊下を、先輩に連れられるがままに歩いていく。


普通に考えればここは宿泊者の階で、ドアは客室のもの…。


だけど、どうしてこんなところに?



一生縁のなかったであろう高級ホテルに気をとられていたせいか、ここに来た目的を知らされていないと思い出した。


ある部屋の前で立ち止まった先輩がカードリーダーにカードキーを通す。


ピピッという音の後に、小さく鍵の開く音。



先輩がドアノブに手をかけ、ドアが開かれた。






「……わぁ」



入った瞬間、思わず声をもらした。



獅堂財閥の経営するホテルで、しかもそのご子息が利用するってなれば最上級の部屋を用意することくらい普通に考えたら分かる。


だから、なんとなくそんな気はしてたけど…これはちょっと予想以上………。




予想以上のスイートルームだ。


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