君に染まる(後編)
「…あ…あのっ、私何も用意してないです!」
ハッとして顔をあげると、先輩はきょとんとした顔で見つめてくる。
「お兄ちゃんのことで頭がいっぱいで、そこまで考えてなくて…」
「別にいいよ」
「よくないです!私も何か」
「だから、別にいいって。今日は祝われる側だろ」
…え?
「お。ナイスタイミング」
そう言いある場所に視線を向ける先輩につられ、困惑したまま私も顔を向けた。
そんな私の視界に飛び込んできた光景。
さっきまで『Merry Christmas』の文字が点灯していた場所には『HAPPY BIRTHDAY MIO』の文字が。
「あ、の…」
「誕生日おめでとう」
「…ど……し、て………」
軽く混乱しながら、途切れ途切れに尋ねる。
「…知って…たんですか…?……その…私の、誕生日」
「堀河ってやつが教えてくれた」
「堀河さん?……どうして堀河さんが?」
「んー…話すと長くなんだけど…まあ、簡単に言えば、今日お前のアニキと話せたのはアイツのおかげみたいなもんで…」
「そうなんですか?」
けど、夕方会った時は何も言ってなかったのに…。
「そん時に『イブは未央ちゃんの誕生日でしょ?』ってさらっと言いだしたもんだから慌てて確認したんだよ。お前そういう大事なこと言わねぇから」
「そ、それはお互い様かと…」
そう言いながら先輩の誕生日のことを思い出す。