絶対君主
1:今日からここが新天地
出会い頭の印象は、とても良かったのだ。
高い身長。細身だがドアを押さえる手はがっしりと大きくて。
家政婦という私を雇うくらいの忙しさのためか、少し不揃いに伸びた濃い茶色の髪。フレームのない眼鏡が掛けられた顔は知的な端正さで、資料で知っている彼の『グラフィックデザイナー』という職業に合っている気がした。
そして、少し疲れを含んでいる低い声が私の名を呼ぶ。
「えぇと…鈴野サン、だっけ?」
「はい、鈴野はるかと申します。本日付けでこちらに派遣となります。これからよろしくお願いします」
開けられたドアの外、荷物を手に頭を下げる私を迎えてくれる声は大人っぽく落ち着いていて優しげだ。
「こちらこそよろしく。…あぁ、どうぞ? 仕事のし甲斐がありすぎるだろう散らかりっぷりだけど」
「…はい、お邪魔します」
外観からしてお高そうなこのマンションの、玄関から伸びる廊下の途中には4つもドアがある。招き通されたリビングはやたらと広く、シンプルでモノクロな低い家具が一層広さを強調していた。…が、残念なことにその空いたスペースは衣類や本や雑誌や食器やビニール袋やカップ麺の残骸で埋め尽くされていた。
高い身長。細身だがドアを押さえる手はがっしりと大きくて。
家政婦という私を雇うくらいの忙しさのためか、少し不揃いに伸びた濃い茶色の髪。フレームのない眼鏡が掛けられた顔は知的な端正さで、資料で知っている彼の『グラフィックデザイナー』という職業に合っている気がした。
そして、少し疲れを含んでいる低い声が私の名を呼ぶ。
「えぇと…鈴野サン、だっけ?」
「はい、鈴野はるかと申します。本日付けでこちらに派遣となります。これからよろしくお願いします」
開けられたドアの外、荷物を手に頭を下げる私を迎えてくれる声は大人っぽく落ち着いていて優しげだ。
「こちらこそよろしく。…あぁ、どうぞ? 仕事のし甲斐がありすぎるだろう散らかりっぷりだけど」
「…はい、お邪魔します」
外観からしてお高そうなこのマンションの、玄関から伸びる廊下の途中には4つもドアがある。招き通されたリビングはやたらと広く、シンプルでモノクロな低い家具が一層広さを強調していた。…が、残念なことにその空いたスペースは衣類や本や雑誌や食器やビニール袋やカップ麺の残骸で埋め尽くされていた。