たったひとつの恋心
「…。」
自分をまじまじと見る。
スーツを着た自分は、自分ではないみたい。
一カ月前に制服を着ていたことが、遠い昔のように感じられる。
窓から春風が入り、ふわっと春の香りがした。
電車に揺られ二時間半。
駅から徒歩十分のところに、私が通う短大がある。
この短大を選んだのは、適当と言っても過言ではない。
ただ、親に
「給料が安定した職業につけ。」
「医療系にしろ。」
と言われたから。
そういえば、高校の時もそうだったなぁ、なんて思いだして鼻で笑ってしまった。