世界で一番大切な
ぬいぐるみ殺傷
「マスター、またですか?」
私の声に反応してかベッドの上のシーツが揺れた。どうやら本人は隠れているつもりらしいのだが、今度という今度は見逃すわけにはいかなかった。
私としてもマスターを叱るのは本意ではないし心苦しい。しかし床の上に散乱した綿とぬいぐるみの脱け殻がそろそろ叱るべきだと私に語りかけてくる。元々はうさぎだったそれの無機的なボタンの目が見上げてきては責める、もっと早く叱ってくれたら自分はこんな姿にならなかったのに、と。
それから目を逸らしてシーツを軽く掴んだ。
丸くなった体の上に被せていただけのシーツは拍子抜けするほどあっさりはがれた。マスターは今回こそ叱られるとわかっているのか顔を上げずに手足をますます縮こませた。可愛らしいその仕草を堪能したいところだったがこの惨状をまずは叱らなければ、と私は小さく息を吸い込んだ。その音にさえ肩を震わせるマスターは小動物のようだ。