世界で一番大切な
「マスター、我慢できたんですね」
「きる、サギリ…いたいの、きらい」
「はい、マスターが傷付くのはご自分でする事でも私は嫌ですから」
「だから、」
「はい」
マスターが自分の身を傷付ける度に私が渋い顔をしていたのを覚えていてくれたのだろう、花のようなシャンプーの香りが鼻腔をくすぐり私の胸を締め付けた。こんなにも私の事を考えてくれて、自分の衝動を抑え込んでくれていたマスター。そのマスターを短絡的な思考でただの悪戯だと思い込み叱ろうとしていた自分があまりにも矮小で愚かしく思えた。私の腕の中でまだ叱られる事に怯えているマスターの震えを少しでも治めてあげたくて、抱き締めている腕に力を込める。