世界で一番大切な
「マスター、ありがとうございます」
「……?」
「私の事を考えて下さったんですね」
「…サギリ、なくから」
「マスターの体が大切だからですよ」
「がまん、した」
「良い子ですね、マスター」
私の腕の中で小さく呟くマスターにそう声をかけると、ようやくそこで顔をあげてもらえた。まだ少し不安げなその目元に口付け、髪を撫でる。嗚呼、今の私達は他人から見れば酷く滑稽だろう。けれどマスターと私にとってはこれが全て、私にはマスターがいればいいし、マスターには私さえいればいい。狭く小さく甘い世界に浸りながら、私は床に散らばった綿を見つめていた。