◇ きみとの距離 ◇



―――流の姿、だった。

唖然として、手から
春休みの宿題を落とした、あたし。


それを見て、流がこっちにゆっくりと近づいて来た。



そして、あたしの宿題を拾い、
「 落ちたよ?
  高倉、さん?
  はいっ、どーぞ♪ 」

と、天使のような笑顔ニコリと笑いでそう言った。
同時にあたしの背中に寒気が走る―――。

「 あ、あり、がと… 」

引き攣った笑顔で必死にそう言って、
受け取ろうとすると、
その上に乗っかっていた、シャーペンをわざとらしく流が落とす。


慌ててあたしがしゃがみ込むと、
流は、
"ご、ごめんねっ"と
心にもなく謝ると、しゃがんでいるあたしの耳元で

『 ほんと、馬鹿だな 』

そう、嘲笑った。



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