約束‐ヤクソク‐


「梨依・・・凌哉って呼べよ・・・」




「あ、ごめんなさいっ。でもあなたのこと、よく覚えていないから・・・」




「俺のこと、思い出せねぇ?」




 なるべくやんわりと言ってみたが、梨依は少しの沈黙の後、




 ゆっくりと首を横に振った。




「そうか・・・ゴメンな?」




 またふるふると首を横に振る梨依。




 その表情は苦痛に歪んでいた。




(ダメだ・・・自分のことばっかり考えて、梨依に辛い思いさせたら意味ねぇよ)




「あ~・・・えっと」




「は、はい?」




「ゆっくりで、いーからな?」




 俺なりの精一杯のフォローのつもりだった。




「ありがとう・・・ございます」




 囁くような声だった。

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