約束‐ヤクソク‐

 俺はそれには答えなかった。




 ただ、黙って自分のマフラーを梨依に巻いた。




「あ・・・悪いです、こんな・・・」




 せっかく巻いてやったマフラーを梨依はすぐさま外そうとする。




「じゃー、なんで何も着けてないの?」




 一番気になったこと。




 決して朝、暖かかったわけでもない。




「えっと・・・友達に貸したんです。彼女、家が遠くて大変だから」




 だからと言って、何故両方ともないのだろう…




 どこまでお人好しなんだ?




 大体……




「私は家も近いし、いつも帰っているコの傘に一緒に入っていこうと思って」






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