約束‐ヤクソク‐
そして、彼女は少し俯いたままコクンと頷いた。
(アレ? これって、嫌って事の肯定・・・?)
焦って、行き場の失くした手をわたわたさせていると
「ありがとう」
「へ?」
自分の中ではてっきり否定されたものだと決めつけていたので、思わずマヌケな声を出してしまった。
そして、そのまま差し出していた私の手から彼女はマフラーを取り、首に巻いた。
「あったかいよ。ありがとう」
穏やかに微笑みそう言うと、何度も何度も頭を下げ、ありがとうと言いながら私の貸したマフラーを翻し、去って行った。
「よかっ・・・たぁ」
はぁと安堵の溜め息がもれた。
また、辺りに静寂が訪れる。
人気もなく、雪も止む気配がない。
屋根の下にいるとはいえ、外の気温は低く、体温は少しずつ奪われる。