約束‐ヤクソク‐
(あ、あたしが無理矢理つくった顔みたいに見えたのかな)
「違うよ凌哉、あたしが思い出したいんだよ・・・。こんなに、素敵な人とどう過ごしてきたんだろうって」
慌ててそう言うと、凌哉は今度はまた顔を横に背ける。
「え、あたしまた変なこと言ったかな?」
「違くて・・・。梨依にそう言われると照れるっていうか」
言われて気付く、凌哉の顔が真っ赤な事に。
それにつられて自分も赤くなってしまう。
その沈黙を破ったのは、看護師さんだった。
『藤波さーん』
「はっ、はい!」
突然のことでどぎまぎしてしまう。
『おめでとうございます。明日、明後日にでも退院できますよ』
「ほ、本当ですか!」
『ええ、検査は全て終了です。記憶が戻るのは藤波さん次第ですし、今までの環境と同じ方が思い出せるかと』
「ありがとうございますっ!」
「梨依、よかったな!」
「うん!」
自然と二人共、笑顔がこぼれた。