ねくすと★DOLL
「話は、すべて聞かせてもらった!」
バサッ!!
二人のいる廊下に響き渡るくらい、勢いよく扇子(せんす)を開く音が鳴り響いた。
「あ、阿部先輩!!」
「あっ!!」
ダッ!!
タマミはコータの手を離れ、“阿部先輩”と呼ばれる女子の元へと駆け寄った。
……鼻血を、ボタボタと垂らしながら。
「先輩! 聞いて聞いて!! ステキな男の子が入部したの!!」
「えっ!?」
コータは、心底驚いた。入部するなど、一言も言っていないのに。
「ほほう……。そちが、新入部員か」
阿部先輩は、パチン、と扇子を閉じ、ゆっくりとコータの元へと近寄った。
「あわ、あわ、あわわわわ……」
コータはおののいた。
阿部先輩の、有無を言わさぬ迫力に、すっかり気後れしていたのだ。
見た目は背も小さく、完全に普通の女子だ。
ショートカットの黒髪が、歩く度に揺れた。
しかし……。
何か、とてつもないオーラを持っている。
そして、完全にエセくさい殿様口調の喋り方……。
『何なんだ、この人は!?』
それが阿部先輩に対する、コータの率直な感想だった。