ねくすと★DOLL
「わっ!! ……な、何をっ!?」
阿部先輩は、細い指でコータの顎(あご)をクイ、と持ち上げた。
「しかるに、予(よ)がこの部活における天下人じゃ。覚えておくがよい」
「え?」
「“部長”って事よ。唯一の3年生の先輩だし」
自前のハンカチで顔をフキフキしながら、タマミがフォローを入れた。
『こ、この人が……部長!?』
コータは言葉にならない思いで、阿部先輩を見つめた。
「そちは、武士の魂を持っておるか?」
「はぁ!?」
阿部先輩は、コータの顔を深くのぞき込んだ。
「いざとなったら、腹をかっ裁いて(さばいて)でも勝ちに向かう、そんな心構えはあるか? と聞いておるのだ」
「は、話が、一つも見えないのですが……」
「のう、蘭丸」
「は?」
「戦国の世に生まれし者、お互いツライのはよく分かる……」
「い、いや僕、亀山ですけど……」
「蘭丸!!」
「は、ハイッ!!」
阿部先輩は、さらにグイ、とコータに顔を近づけた。
「粉骨砕身(ふんこつさいしん)の思いで、予と一緒に闘ってはくれぬか?」
「だ、誰と闘えばいいんですか?」
「ええい、細かい事は気にするな!!」
「気になりますっ!!」
阿部先輩の目は、マジだった。
コータはこの状況を、どうしたらいいか分からなくなった。